自治体DX・行政DXとホームページ制作 ガバメントクラウド時代の進め方
「ガバメントクラウド対応に追われる中、住民向けホームページの刷新も進めたい」という自治体Web担当者向けに、自治体DXの全体像からリニューアルの具体的な進め方までを解説します。
地方公共団体情報システムの標準化やガバメントクラウドへの移行が進む中、住民と直接向き合うWebサイトのあり方も同時に見直しを求められています。基幹業務システムの標準化が「行政の内部をどう効率化するか」という取り組みであるのに対し、ホームページは「住民にどう情報を届け、行政サービスへどう橋渡しするか」を担う窓口です。両者は技術的には別の取り組みでありながら、自治体DXという同じ大きな流れの中で連動しています。
本記事では、自治体DX・行政DXの全体像とガバメントクラウドの位置づけを整理したうえで、自治体ホームページに特有のUI設計・アクセシビリティ・セキュリティ要件、そして公募型プロポーザルを中心とした発注プロセスの実務、さらに公開後の運用・改善まで、自治体Web担当者・情報システム担当者が実務で参照できる内容を体系的にまとめました。広報部門でホームページを担当する方だけでなく、情報システム部門でガバメントクラウド移行を担当しながらホームページの所管も兼務している方にも参考になる内容です。ホームページのリニューアルを検討している、あるいは庁内説明の資料を準備している方は、ぜひ参考にしてください。
1. 自治体DXの全体像とWebサイトの位置づけ
自治体DXとは、デジタル技術の活用によって行政サービスの質を高め、業務の効率化と住民満足度の向上を同時に実現する取り組みです。総務省が示す自治体DX推進計画では、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、セキュリティ対策の徹底などが重点取組事項として位置づけられています。ホームページ単体は重点取組事項として明記されてはいませんが、住民向けのデジタルサービス全体を構成する重要な要素として、関連する各種計画の中で位置づけられています。
1-1. 自治体DX推進計画における重点取組と住民サービス
自治体DX推進計画の重点取組は、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続きのオンライン化、AI・RPAの利用推進、テレワークの推進、セキュリティ対策の徹底の6つに整理されます。このうち行政手続きのオンライン化は、住民がオンライン申請や予約サービスにアクセスする「入口」としてホームページと直結する取り組みです。ホームページの情報設計が不十分だと、せっかく整備したオンライン手続きへの入口が住民に見つけてもらえず、デジタル化の効果が発揮されにくくなります。担当者は、自庁のDX推進計画の重点取組とホームページの役割を結び付けて説明できるようにしておくことが、庁内での予算確保や合意形成においても有効です。
1-2. ガバメントクラウドとは何か
ガバメントクラウドとは、デジタル庁が整備する政府・自治体共通のクラウド基盤です。地方公共団体情報システム標準化法に基づき、住民記録・地方税・国民健康保険・介護保険・戸籍など20の基幹業務システムについて、全国の自治体が標準仕様に準拠したシステムへ移行し、共通のクラウド環境上で稼働させる枠組みを指します。複数の自治体が同じクラウド環境を共同利用することで、コストの分散と運用の効率化を図ることが主な目的です。利用料の支払いは「自治体→デジタル庁→クラウドサービス事業者」という流れをとり、自治体が個々にクラウド事業者と直接契約する形態とは異なります。
1-3. ガバメントクラウドとホームページの関係を正しく整理する
ここで重要なのは、ガバメントクラウドが対象とするのは住民記録や税務などの「基幹業務システム」であり、住民が日常的に閲覧する公式ホームページそのものは原則として対象に含まれていない点です。ホームページはCMS(コンテンツ管理システム)を用いて別途構築・運用されており、多くの自治体では都道府県単位の自治体情報セキュリティクラウドを経由して公開されています。両者は技術的には別の基盤ですが、自治体DXという同じ政策の流れの中でセキュリティ要件や住民サービスのオンライン化への期待が高まっている点では密接に関係しています。ホームページ担当者がこの違いを正確に説明できると、庁内のシステム部門や財政部門との調整がスムーズになります。
1-4. デジタル社会の実現に向けた重点計画とロードマップ
2025年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、ガバメントクラウドへの移行や自治体システムの標準化に加えて、2030年度までを見据えた中長期的な工程表が示されています。この重点計画は、基幹業務システムの効率化だけでなく、住民が行政サービスをデジタルで利用できる環境全体の整備を目指すものであり、ホームページを含む住民接点のデジタル化もその射程に含まれます。重点計画は毎年改定されるため、概要を継続的に把握しておくことで、自庁のホームページ刷新が国のどの方針と関連しているかを庁内に説明しやすくなります。単発のリニューアルではなく、数年単位の改善計画として位置づける視点も重要です。
1-5. 都道府県・近隣自治体との広域連携の視点
ホームページのリニューアルは単独の自治体だけで検討する必要はなく、都道府県や近隣の市区町村との連携も選択肢のひとつです。観光情報や広域での子育て支援情報など、住民の生活圏が複数の自治体にまたがるテーマでは、共同でサイトを運営することで、コンテンツ作成や保守の負担を分散できます。近隣自治体の取り組み状況を事前に確認し、共同調達や情報共有の余地がないかを検討しておくことも、限られた予算と人員を効率的に活用するための現実的なアプローチです。
2. 自治体ホームページが抱える典型的な課題
多くの自治体ホームページでは、長年の運用を経て構造的な課題が積み重なっています。リニューアルを検討する際は、まず自庁のホームページがどの課題を抱えているのかを客観的に整理することが第一歩です。
2-1. 情報が探せない・伝わらないという住民側の不満
自治体ホームページでは部署ごとに情報を掲載する運用が長く続いた結果、同じテーマの情報が複数のページに分散し、住民が目的の情報にたどり着けないという課題が頻繁に発生します。組織図に沿ったメニュー構成は職員にとっては理解しやすい一方、住民は「組織」ではなく「やりたいこと」を基準に情報を探すため、両者の間にずれが生じやすくなります。検索機能の精度が低い、関連情報への内部リンクが整備されていないといった要因も、情報の見つけやすさを損なう典型的な原因です。
2-2. 老朽化したCMS・属人化した更新体制
導入から長期間が経過したCMSでは、操作性の低さや機能不足から特定の職員に更新作業が集中し、部署をまたいだ情報発信のスピードが落ちてしまう課題が見られます。担当者の異動や退職によって運用ノウハウが引き継がれず、結果的に情報の更新が滞ってしまうケースも少なくありません。スマートフォン対応が不十分なまま放置されているサイトでは、住民の主要なアクセス手段に対応できておらず、利便性の低下に直結します。
2-3. セキュリティ・アクセシビリティ対応の遅れ
公式ホームページは住民の個人情報を扱うフォームを備えていることが多く、サイバー攻撃の標的となるリスクが常に存在します。旧式のCMSや長期間更新されていないプラグインを使い続けていると、脆弱性対応が後手に回りやすくなります。また、高齢者や障害のある住民が利用しづらいデザイン・構造のまま運用が続いているケースもあり、行政機関に求められるアクセシビリティ水準との乖離が課題として指摘されることがあります。これらの課題は個別に対応するのではなく、リニューアルのタイミングで包括的に解消することが効率的です。
2-4. 予算・人員不足という構造的課題
自治体の情報システム部門や広報部門の多くは、限られた人員で多岐にわたる業務を担っています。ガバメントクラウド移行や基幹業務システムの標準化対応に人員が割かれる中、ホームページの運用・改善に充てられる時間が圧迫されやすい状況にあります。予算面でも、ホームページは単年度の運用費としてしか計上されていないケースが多く、大規模なリニューアルに必要な予算を確保するには、複数年度にわたる事前の調整が必要になります。こうした構造的な制約を理解した上で、優先度の高い課題から段階的に着手する計画を立てることが、現実的なリニューアル戦略につながります。
2-5. 住民の声を可視化する仕組みの欠如
多くの自治体ホームページでは、住民からの意見を集める仕組みがお問い合わせフォームやアンケートの設置にとどまり、寄せられた声がホームページの改善に体系的に反映される運用にまでは至っていないケースが見られます。コールセンターや窓口で受けた質問、SNSへの反応といった情報が部署内に留まり、ホームページ全体の改善に活用されないまま蓄積されてしまうことも少なくありません。リニューアルを機に、住民の声を集約し改善につなげる仕組みを設計段階から組み込んでおくことが、刷新の効果を長期的に持続させるポイントになります。
3. 自治体DXとガバメントクラウドが生み出すホームページ刷新の機運
ガバメントクラウド移行の本格化は、ホームページ単体のプロジェクトにも間接的な影響を及ぼしています。庁内のDX推進体制が強化される中、ホームページの刷新を検討しやすい環境が整いつつあります。
3-1. ガバメントクラウド移行の進捗が浮き彫りにした課題
デジタル庁が公表したデータによれば、2026年1月末時点での基幹業務システム移行の完了率は全体の約38.4%にとどまり、当初目標とされた令和7年度末(2026年3月末)までの原則移行完了は、多くの自治体にとって達成が難しい状況となりました。移行が困難なシステムは「特定移行支援システム」として、最長で令和12年度末まで期限が延長される制度的な対応も整備されています。この移行作業を通じて、多くの自治体でシステム関連の予算配分やベンダー対応に追われ、ホームページのような周辺領域の刷新が後回しになりやすい構造が浮き彫りになりました。一方で、移行作業が一定の段落を迎えた自治体では、次のDX施策としてホームページのリニューアルに着手する動きも見られます。
3-2. 自治体情報セキュリティクラウドとホームページ公開環境
都道府県単位で整備されている自治体情報セキュリティクラウドは、域内の市区町村のインターネット接続を集約し、不正アクセスや標的型攻撃への対策を一元的に講じる仕組みです。多くの自治体では、ホームページもこのセキュリティクラウドを経由して公開されており、リニューアルにあたってはCDNの利用条件やキャッシュ対象範囲など、セキュリティクラウド側の接続要件を満たす設計が必要になります。制作会社を選定する際は、こうした自治体固有のネットワーク構成への対応経験があるかどうかも確認しておくべき重要なポイントです。
3-3. ホームページ刷新を庁内DXの文脈で説明する
ガバメントクラウド移行や基幹業務システムの標準化は、多くの自治体で予算と人員を投じる優先度の高い取り組みとして認識されています。ホームページのリニューアルを単独の「広報事業」として説明するのではなく、住民向けデジタルサービスの入口を整備する自治体DXの一環として位置づけることで、庁内での合意形成や予算確保がしやすくなる傾向があります。オンライン申請の利用率向上、マイナンバーカードを活用したサービスの周知など、既存のDX施策との接続点を整理して説明資料に盛り込むことが効果的です。
3-4. 認定クラウドサービス事業者と共同利用方式という考え方
ガバメントクラウドの対象クラウドサービスには複数の事業者が認定されており、選択肢の多様化が進んでいます。自治体がガバメントクラウドを利用する形態には、複数自治体が同じクラウド環境を共同で利用する方式と、単独の自治体が独自の環境を確保する方式があり、中小規模の自治体では共同利用方式によるコスト分散が一般的です。この考え方はホームページの分野でも参考になります。近隣自治体と共同でCMSの保守体制や運用ルールを整備する、あるいは広域連携を前提とした観光情報サイトを共同運営するなど、単独では負担の大きい取り組みを複数自治体で分担する発想は、ホームページ運用の効率化にも応用できます。
3-5. 自治体DXに関する財政支援制度の活用
ガバメントクラウドへの移行に際しては、デジタル田園都市国家構想交付金をはじめとする財政支援制度が用意されており、移行費用の一部を支援対象とすることができます。これらの財政支援には申請期限が設定されているため、移行が遅延して申請のタイミングを逃すと、本来活用できたはずの支援を受けられなくなるリスクがあります。ホームページのリニューアルそのものを直接対象とする国の財政支援は限定的ですが、デジタル化に関連する補助金や交付金の対象範囲を確認し、可能な範囲で財源を組み合わせる視点を持っておくことは、予算確保の選択肢を広げるうえで有効です。
3-6. 自治体DXを推進する人材確保・育成の課題
ガバメントクラウド移行をはじめとする自治体DXの取り組みは、デジタル技術に関する専門知識を持つ人材の確保が前提となりますが、多くの自治体では専門人材の採用や育成が追いついていない状況があります。ホームページのリニューアルにおいても、CMSの仕組みやSEO・アクセシビリティの基礎知識を持つ担当者が庁内にいるかどうかで、制作会社とのコミュニケーションの精度や、公開後の運用品質に差が出やすくなります。外部人材の活用や、職員向けの研修機会を計画的に設けることも、中長期的なホームページ運用の質を高める投資として検討する価値があります。
4. 住民目線のUI設計と情報設計の基本
自治体ホームページのUI設計では、住民が「組織」ではなく「目的」を基準に情報を探すという前提に立ち、誰にとっても迷わないサイト構造を作ることが基本になります。
4-1. 「3クリックルール」と情報の見つけやすさ
自治体ホームページの仕様書では、トップページから目的のコンテンツまで概ね3クリック程度でたどり着ける階層構造を求める例が多く見られます。これは住民が複雑な組織構造を意識せずに情報へアクセスできるようにするための実務上の目安です。実現するためには、トップページのメニュー構成を「くらし」「子育て」「事業者の方へ」といった住民の関心軸で整理し、検索機能とカテゴリ分類の両方から同じ情報にアクセスできるようにする設計が有効です。内部の組織変更が起きてもURL構造が大きく変わらないよう、情報設計の段階で柔軟性を確保しておくことも重要です。
4-1-1. 住民目線のメニュー分類例
トップページの主要メニューを住民の関心軸で分類する際は、以下のような切り口が参考になります。
・くらし・手続き:転入転出、戸籍、税金、ごみ出しなど日常的な手続きに関する情報
・子育て・教育:出産、保育園・幼稚園、学校、子育て支援サービスに関する情報
・福祉・健康:介護、障害者福祉、健康診断、医療費助成に関する情報
・事業者の方へ:許認可、入札・契約、商工業支援に関する情報
・観光・移住:観光情報、ふるさと納税、移住・定住支援に関する情報
これらの分類はあくまで一例であり、自庁の人口構成や産業構造に応じて項目の優先順位を調整することが望ましい進め方です。
4-2. 高齢者・障害のある住民・外国人住民に配慮したユニバーサルデザイン
自治体ホームページは住民全体を対象とするため、特定の利用者だけを想定したデザインでは不十分です。文字サイズの変更機能、十分なコントラスト比の確保、読み上げソフトに対応したマークアップなど、高齢者や視覚に障害のある住民への配慮が基本要件となります。在留外国人が増加している地域では、多言語対応や「やさしい日本語」表記への対応も検討すべき項目です。自動翻訳機能を導入する場合も、行政手続きのように誤訳が住民の不利益につながりやすい情報については、原文との整合性を確認できる運用体制を併せて整えておく必要があります。
4-3. 防災・緊急時対応を前提としたトップページ設計
自治体ホームページには、平時の情報発信機能に加えて、災害時に住民の生命に関わる情報を迅速に届ける役割があります。仕様書では、平時のコンテンツを最小限に抑えた災害時用の軽量なトップページへ自動的に切り替えられる設計を求める例が一般的です。アクセスが急増する災害時にもサーバーが落ちないよう、CDNやキャッシュの活用を前提とした設計が欠かせません。避難情報や被害状況など、複数の部署が同時に更新する可能性がある情報については、更新権限を持つ担当者を増やしておくなど、運用面の備えも合わせて検討しておく必要があります。
4-4. ライフイベント別のナビゲーション設計
住民が行政手続きを必要とするタイミングは、引っ越し・出産・子育て・介護など、生活の具体的な出来事と結びついています。組織の部署名ではなく「引っ越しの手続き」「赤ちゃんが生まれたら」といったライフイベント単位で情報をまとめて提示するナビゲーション設計は、住民にとって関連する複数部署の手続きを一度に把握できる利点があります。トップページに主要なライフイベントへの入口を設け、各特集ページから関連部署のページへ内部リンクを張る構成にすることで、組織横断的な情報の見つけやすさを実現できます。マイナンバーカードを使ったオンライン申請への案内も、こうしたライフイベント別ページの中に自然に組み込むことで、利用率向上につながりやすくなります。
4-5. モバイルファースト設計と通信環境への配慮
住民のホームページ閲覧はスマートフォンが中心であり、外出先や災害時など通信環境が必ずしも良好でない状況での利用も想定する必要があります。画像の圧縮や軽量なページ構成を基本とし、低速な回線でも主要な情報が表示されるよう配慮した設計が求められます。タップ操作を前提とした十分なボタンサイズの確保や、フォーム入力の手間を減らす工夫も、高齢者や手指の動きに制約のある住民にとって重要な要素です。デザインを優先するあまり表示速度が犠牲になると、緊急時の情報伝達という自治体ホームページ本来の役割が損なわれるおそれがあります。
4-6. 検索機能とサイト内検索の精度向上
自治体ホームページではページ数が膨大になりやすく、メニュー構造だけでは目的の情報にたどり着けない住民も少なくありません。サイト内検索の精度が低いと、住民は外部の検索エンジンに頼らざるを得なくなり、ホームページ自体の利便性が損なわれてしまいます。よく検索されるキーワードを分析し、表記の揺れ(ひらがな・カタカナ・略称など)を吸収できる検索エンジンを選定すること、検索結果に手続きの概要や担当部署を分かりやすく表示することが、サイト内検索の実用性を高めるポイントです。
5. Webアクセシビリティ対応の実務
行政機関等のホームページでは、高齢者や障害のある住民を含むすべての利用者が情報や手続きにアクセスできるようにする責務が、民間企業よりも早い段階から課せられてきました。
5-1. JIS X 8341-3とAA準拠という考え方
ウェブアクセシビリティに関する日本産業規格JIS X 8341-3は、高齢者・障害者等が情報通信機器やサービスを利用しやすくするための設計指針です。現行のJIS X 8341-3:2016では、達成基準がA・AA・AAAの3段階で定められており、国の機関や地方公共団体には「適合レベルAAに準拠」することが推奨されています。レベルAとAAの達成基準をすべて満たした場合に「準拠」と表記できるというルールがあり、ホームページの公開ページにこの表記と試験結果を掲載することが求められます。リニューアルの仕様書には、目標とする適合レベルと達成期限を明記しておくことが標準的な進め方です。
5-2. みんなの公共サイト運用ガイドラインに基づく取組のステップ
総務省が公表する「みんなの公共サイト運用ガイドライン」は、公的機関がアクセシビリティ対応を進めるための手順書です。最新の2024年版では、近い将来のJIS改正動向を踏まえた取組や、公的機関の取組事例が刷新されています。ガイドラインに基づく取組は、まずウェブアクセシビリティ方針を策定して公開し、団体内のページ作成ルールとしてガイドラインを整備し、その後継続的な試験と評価を年1回程度のサイクルで実施するという流れで進めます。リニューアルのタイミングは、こうした方針の見直しと試験体制の再構築を同時に行う好機にもなります。
5-2-1. ウェブアクセシビリティ方針に記載すべき項目
ウェブアクセシビリティ方針を策定する際は、一般的に以下の項目を明記します。
・対象範囲:方針が適用されるホームページ・サブサイトの範囲
・目標とする適合レベル:JIS X 8341-3:2016のレベルA・AAのいずれを目指すか
・達成期限:いつまでに目標の適合レベルを達成するか
・試験の実施方法:自動診断ツールと目視確認をどう組み合わせるか
・結果の公開方法:試験結果をどの頻度・形式でホームページに公開するか
方針を公開した後は、形骸化させずに毎年の取組確認・評価表の運用と連動させることが重要です。
5-3. 制作会社選定時に確認すべきアクセシビリティ対応力
アクセシビリティ対応は、デザインを整えた後から修正するよりも、制作の初期段階から組み込んだほうが手戻りが少なく済みます。制作会社を選ぶ際は、JIS X 8341-3に基づく自動診断・目視診断の実施経験があるか、CMSの管理画面でalt属性の入力を必須化できるか、見出し構造を適切に管理できる仕組みを備えているかといった点を確認するとよいでしょう。フォー・クオリアではWebアクセシビリティの診断から改善提案・実装対応まで一貫して支援しており、リニューアル時の適合レベル設定から公開後の試験結果開示までをワンストップで進められる体制を整えています。
5-4. アクセシビリティ試験結果の公開と継続的な確認サイクル
JIS X 8341-3に基づく対応は、一度試験を行えば完了するものではなく、継続的に確認と改善を行うサイクルとして運用する必要があります。みんなの公共サイト運用ガイドラインでは、年1回程度の頻度でウェブアクセシビリティ取組確認・評価表を用いた確認を行い、その結果を団体のホームページで公開することが推奨されています。コンテンツを追加するたびにすべてのページを目視で確認することは現実的ではないため、自動診断ツールによる定期チェックと、新規ページ公開時のチェックリスト運用を組み合わせる体制が実務的です。達成できていない項目があれば改善計画とあわせて開示することで、誠実な運用姿勢を住民に示すことができます。
5-5. miCheckerなど診断ツールの活用
総務省はウェブアクセシビリティの機械的な診断を行うための無償ツール「miChecker」を提供しています。miCheckerを用いることで、JIS X 8341-3:2016の適合レベルA・AAの基準への対応状況を、専門知識がなくても一定範囲まで確認できます。ただし、機械的な診断だけでは色のコントラストの妥当性や読み上げ順序の自然さといった項目を完全には検証できないため、重要なページについては実際にスクリーンリーダーを使った確認や、専門家による目視確認と組み合わせることが推奨されます。
6. セキュリティ要件と個人情報保護への対応
自治体ホームページは住民の個人情報を取り扱うフォームを備えていることが多く、民間企業のサイトと比較してもセキュリティ要件への配慮が一段と重要になります。
6-1. 自治体ホームページに求められるセキュリティ基準
自治体ホームページのセキュリティ対策では、CMS本体やプラグインの脆弱性管理、通信の暗号化、不正アクセスの監視体制が基本要件となります。都道府県単位の自治体情報セキュリティクラウドを経由して公開している場合は、その接続要件への適合も必要です。仕様書では、納品後の脆弱性診断の実施や、緊急時のセキュリティパッチ適用までの対応スピードを評価項目として設定する自治体も増えています。制作会社にはこうした要件を理解した上で、保守フェーズまで見据えた提案ができることが求められます。
6-1-1. セキュリティ要件として仕様書に明記すべき項目
自治体ホームページのリニューアル仕様書には、以下のようなセキュリティ関連項目を具体的に記載しておくことが望ましいです。
・通信の暗号化:常時SSL化やTLSバージョンの要件
・脆弱性診断:納品前・納品後における診断の実施タイミングと頻度
・改ざん検知:ファイル変更の監視体制と通知方法
・バックアップ体制:データの保管期間とリストア手順
・緊急時の連絡体制:障害発生時の初動対応にかかる時間の目安
これらの項目を仕様書段階で明確にしておくことで、事業者ごとの提案内容を公平に比較しやすくなります。
6-2. CMS選定とセキュリティ対応の関係
CMSの選定はセキュリティ対応の土台を決める重要な判断です。コンテンツ更新時に静的HTMLファイルを生成する静的出力方式のCMSは、公開側のサーバーとデータベースの常時接続が不要となるため、SQLインジェクションなどの攻撃経路を構造的に減らせる利点があります。官公庁や自治体での採用実績が多いMovable Typeはこの静的出力方式を採用しており、セキュリティ要件への適合と長期運用を前提とした安定性の両面で選ばれることが多いCMSです。CMSごとの特徴や選定基準については「官公庁・自治体のWebサイトにMovable Typeが選ばれる5つの理由」で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
6-3. 個人情報保護評価とフォーム・問い合わせ機能の設計
住民票の写しの請求や子育て関連サービスの申請など、特定個人情報を取り扱うシステムを新たに構築・変更する場合には、個人情報保護評価(PIA)の実施が必要になるケースがあります。ホームページ上の問い合わせフォームであっても、取得する情報の範囲や保管方法によっては評価の対象となる可能性があるため、企画段階で情報システム部門や個人情報保護担当部署と連携し、対象となるかどうかを早期に確認しておくことが重要です。フォームの入力項目は必要最小限に絞り、送信後のデータ保管期間や閲覧権限を明確にしておくことが、リニューアル時の基本的な配慮事項となります。
6-4. 改ざん対策と監視体制の整備
自治体ホームページの改ざんは、誤った行政情報の発信や住民の個人情報漏えいにつながる重大なリスクです。CMSや関連プラグインのバージョンを定期的に更新する体制を整えるとともに、ファイルの変更を検知する仕組みや、不審なアクセスを早期に察知する監視サービスの導入が有効な対策となります。リニューアルの仕様書には、納品後の保守フェーズにおける脆弱性診断の頻度や、改ざんが検知された場合の復旧手順・連絡体制まで明記しておくことで、緊急時の対応速度を担保できます。制作会社を選定する際は、平時の保守だけでなく、緊急時のサポート体制についても具体的な提案を求めることが望ましいです。
6-5. クラウド型CMSにおけるセキュリティ責任分担
クラウド型のCMSを採用する場合、インフラ部分のセキュリティはクラウド事業者が担い、コンテンツやアクセス権限の管理は自治体側の責任となるなど、責任の分担が従来のオンプレミス型CMSとは異なります。リニューアルの検討段階で、どこまでが事業者の責任範囲で、どこからが自庁の運用責任になるのかを契約書・仕様書上で明確にしておくことが、トラブル発生時の対応をスムーズにする前提になります。
7. 自治体ホームページリニューアルの進め方
自治体のホームページリニューアルは、民間企業の発注プロセスとは異なる独自の手順を踏みます。発注形態や評価の仕組みを正しく理解しておくことが、プロジェクトを円滑に進める前提条件です。
7-1. 現状課題の整理と要件定義
リニューアルの第一歩は、現行ホームページのアクセス状況やページ数、組織構成、過去に寄せられた住民からの意見などを棚卸しし、課題を整理することです。あわせて、新たに導入したい機能(多言語対応、音声読み上げ、防災情報の発信機能など)や、対応すべきアクセシビリティの適合レベル、予算規模の見込みを庁内で共有しておきます。要件が固まっていない段階で複数の事業者へ問い合わせると、提案内容の比較が難しくなるため、可能な範囲で要件を文書化してから事業者選定のプロセスに入ることが望ましい進め方です。
7-2. 公募型プロポーザルと一般競争入札の違い
自治体ホームページのリニューアルでは、価格だけでなく提案内容の質を重視するため、公募型プロポーザル方式が広く採用されています。公募型プロポーザルは、参加を希望する事業者から企画提案書を募り、デザイン力・技術力・運用体制などを審査委員会が評価して契約候補者を選定する方式です。これに対し、規格があらかじめ明確で価格競争が適切な業務には一般競争入札が用いられますが、ホームページのデザインやUI設計のように成果物の質を事前に数値化しにくい業務には、提案内容を評価できる公募型プロポーザルが適しているとされています。
7-3. 仕様書作成のポイントと評価基準の設計
仕様書には、業務の目的、対象範囲、デザイン・機能要件、CMSに関する要件、アクセシビリティの適合目標、セキュリティ要件、スケジュール、データ移行の方法などを具体的に記載します。評価基準を設計する際は、提案内容の独自性や実現可能性に加えて、官公庁・自治体での制作実績、保守・運用体制、緊急時の対応スピードといった項目を重視する自治体が増えています。仕様書の記載が抽象的すぎると事業者ごとの提案レベルに差が出やすくなるため、過去の類似事例を参考にしながら、評価しやすい具体的な記載を心がけることが重要です。
7-3-1. 仕様書の主要記載項目一覧
自治体ホームページリニューアルの仕様書には、一般的に以下の項目を盛り込みます。
・業務概要・目的:リニューアルによって達成したい目標
・対象範囲:本体サイトおよび関連サブサイトの範囲
・デザイン・機能要件:レスポンシブデザイン、検索機能、防災用ページなどの要件
・CMS要件:操作性、権限管理、アクセシビリティ対応の可否
・セキュリティ・運用要件:脆弱性対策、保守体制、緊急時対応
・スケジュール:契約から公開までの工程と移行作業の期間
・データ移行・引き渡し条件:既存コンテンツの移行範囲と契約終了後の取り扱い
評価基準は、この仕様書の各項目に対応させる形で設計すると、審査の公平性と納得感を高めやすくなります。
7-4. 予算編成・庁内合意とスケジュールの組み方
ホームページリニューアルの予算規模は自治体の人口規模や機能要件によって大きく異なりますが、企画提案を伴う公募型プロポーザル案件では、数千万円規模の予算が組まれる例も見られます。予算編成は前年度のうちに固める必要があるため、リニューアルを検討し始めた段階で財政部門への事前相談を行い、予算化のスケジュールに乗せておくことが欠かせません。公募から契約、制作期間、移行作業を経て公開に至るまでには半年から1年程度を要することが一般的であり、年度をまたぐ進行になる場合は議会説明や継続費の検討など、庁内手続き面のスケジュールも合わせて組み立てておく必要があります。
7-5. 公募の競争性を確保する工夫
公募型プロポーザルは提案内容の質を重視する一方で、参加事業者が極端に少ない場合は競争性が確保されず、結果として提案内容の比較が難しくなるという課題があります。参加事業者を増やすためには、仕様書の公開期間を十分に確保すること、質問受付の機会を設けて要件の不明点を事前に解消できるようにすること、そして官公庁での実績を必須条件にしすぎず、適切な実績要件の範囲を設定することが有効です。近隣自治体での発注事例や仕様書を参考にしながら、過度に専門的すぎない記載を心がけることで、より多くの事業者が参加しやすい公募条件を整えることができます。
7-6. データ移行・引き渡し条件の明記
リニューアルでは、現行ホームページに掲載されている数千ページ規模のコンテンツやファイルを新システムへ移行する作業が発生します。仕様書には、移行対象とするデータの範囲、URLが変更になる場合のリダイレクト対応、検索エンジンの評価を維持するための注意点を明記しておくことが重要です。また、契約終了後にソースコードやコンテンツデータを自庁で保管・引き渡しできる条件にしておくことで、将来的に制作会社を変更する場合でも、過去の蓄積を引き続き活用できる体制を確保できます。
7-7. 既存事業者との関係整理(リプレイス時の留意点)
長年同じ事業者にホームページの運用を委託してきた場合、リニューアルを機に事業者を変更することで、提案内容や費用の比較を行いやすくなる一方、これまでの運用ノウハウやドメイン・サーバーの管理権限の引き継ぎが課題になることがあります。事前に既存事業者との契約内容を確認し、ドメインの管理者情報やSSL証明書、各種アカウントの権限が自庁に帰属していることを確認しておくことで、事業者変更に伴うトラブルを防ぐことができます。プロポーザルの公募段階から、データ移行に関する協力義務を既存事業者の契約条項に含めておくことも有効な対策です。
8. CMS選定と運用体制の構築
リニューアル後の運用品質は、CMS選定と庁内の運用体制によって大きく左右されます。制作段階だけでなく、公開後の運用までを見据えた設計が必要です。
8-1. 自治体に適したCMSの選び方
自治体ホームページに適したCMSを選ぶ際は、アクセシビリティ対応のしやすさ、セキュリティの堅牢性、調達プロセスとの整合性、国内での対応実績という4つの観点で比較することが基本です。官公庁・自治体での採用実績が多いMovable Typeや、高度なワークフロー機能を備えたPowerCMSは、こうした要件への適合度が高いCMSとして挙げられます。CMSの種類ごとの特徴や業種別の選定基準については「CMSの種類と選び方」で詳しく整理していますので、製品選定の初期段階で合わせてご確認ください。フォー・クオリアはMovable Type ProNet認定パートナーとして、官公庁・自治体のCMS導入支援にも対応しています。
8-2. 分散更新体制と全庁的なガバナンスの両立
自治体ホームページは、広報部門だけでなく多数の部署が個別にコンテンツを更新する分散型の運用が一般的です。各部署が自律的に情報を発信できる権限分離を実現しつつ、デザインやライティングの品質が部署ごとにばらつかないよう、全庁的な運用ルールとガイドラインを整備することが重要です。CMSの管理画面にテンプレートを用意し、見出しの使い方や画像のalt属性入力を必須化するなど、システム側の制約によって品質を一定に保つ工夫も有効です。
8-3. 委託・内製のバランスと運用代行の活用
公開後の運用では、軽微な更新作業は内製化し、デザインの大幅な変更やシステム的な改修は制作会社に委託するという役割分担が一般的です。専任の担当者を確保しにくい自治体では、運用保守を外部の運用代行サービスに委託することで、人事異動による運用ノウハウの断絶を防ぎながら、安定した更新体制を維持できます。フォー・クオリアでは、ホームページ制作からSEO対策、アクセス解析、サーバー保守、Webアクセシビリティ診断まで一社で対応できる体制を整えており、自治体の運用体制に合わせた柔軟な支援が可能です。
8-4. 多言語・やさしい日本語コンテンツの運用体制
多言語対応や「やさしい日本語」によるコンテンツは、一度作成すれば終わりではなく、原文の更新に合わせて翻訳版も更新し続ける運用体制が必要です。担当部署が原文を更新した際に、多言語ページの更新が漏れてしまうと、情報の不一致がそのまま住民の不利益につながるおそれがあります。CMS側で原文と翻訳版を紐づけて管理できる仕組みを用意し、原文更新時に翻訳版の見直しが必要であることをアラートで通知する運用を整えておくと、情報の整合性を保ちやすくなります。
8-5. 職員向け研修とマニュアル整備
新しいCMSを導入しても、実際に更新作業を行う職員がその使い方を理解していなければ、運用は定着しません。リニューアルのプロジェクトには、納品時の操作説明会だけでなく、異動後に新しく担当になった職員でも独力で更新作業を行えるマニュアルの整備を組み込んでおくことが重要です。よくある操作ミスやアクセシビリティ上の注意点をまとめたチェックリストを用意しておくと、担当者が変わっても一定の品質を保った更新を続けやすくなります。
8-6. 委託事業者との定例会議とKPI管理
リニューアル後の運用を委託する場合は、契約時に定例会議の頻度と報告内容を取り決めておくことが、運用品質を維持するうえで重要です。アクセス状況やお問い合わせ件数、アクセシビリティの試験結果といった指標をKPIとして共有し、月次や四半期ごとに振り返る場を設けることで、課題の早期発見と継続的な改善につなげやすくなります。委託先に任せきりにするのではなく、庁内の担当者も指標の意味を理解し、改善提案の妥当性を判断できる体制を整えておくことが望ましい運用です。
8-7. CMSのバージョンアップ・サポート終了への対応
CMSやその関連プラグインには、開発元によるサポート終了(EOL)が設定されていることが一般的です。サポートが終了したバージョンを使い続けると、新たな脆弱性が発見されても修正パッチが提供されず、セキュリティリスクが高まります。リニューアル時には、選定するCMSの長期的なサポート方針やバージョンアップの頻度を確認し、保守契約の中に定期的なバージョンアップ作業を組み込んでおくことが望ましい対応です。
9. リニューアル後の効果測定と継続的な改善
ホームページは公開して終わりではなく、住民の利用状況をもとに継続的に改善していくことで、本来の効果を発揮します。
9-1. 住民満足度・利用状況の可視化
リニューアル後は、アクセス解析ツールを用いてページごとの閲覧数や滞在時間、よく利用される機能を定量的に把握します。あわせて、住民満足度調査やホームページに関する意見募集を実施し、数値データだけでは見えにくい使いやすさの課題を補完的に収集することが効果的です。特定のページへのアクセスが極端に少ない場合は、情報自体が住民に認知されていない可能性があるため、関連する広報媒体での周知と組み合わせた改善が必要になります。
9-2. SEO・AIO時代における行政情報の到達性
住民が行政手続きの方法を調べる際、検索エンジンやAI Overviewを経由して情報にたどり着くケースが増えています。自治体ホームページにおいても、ページタイトルや見出し構造を検索意図に対応させ、検索エンジンに正しく評価されるサイト構造を維持することが、住民にとっての「情報の見つけやすさ」に直結します。AI検索が普及する環境では、手続きの対象者・必要書類・申請方法といった情報を明確に構造化して記述することが、AIによる正確な要約や引用にもつながりやすくなります。
9-3. PDCAサイクルの構築と次期更新への備え
リニューアル後は、月次・四半期・年次といった単位でアクセス状況やアクセシビリティの試験結果を確認し、改善を積み重ねるPDCAサイクルを構築しておくことが望ましい運用です。次回のリニューアルや法改正・JIS改正への対応に備え、現行サイトの構成・コンテンツ・課題を記録として残しておくことで、将来の引き継ぎや次期プロポーザルの仕様書作成がスムーズになります。担当者の異動が前提となる自治体組織においては、属人化しない記録の残し方そのものが、持続可能な自治体DXの基盤になります。
9-4. 住民からの問い合わせ・FAQの活用
コールセンターや窓口に寄せられる住民からの問い合わせ内容は、ホームページの情報設計を改善するための重要な手がかりです。よく寄せられる質問をFAQページとして整理し、検索エンジンからの流入も見込める形で公開することで、電話や窓口対応の件数自体を減らす効果も期待できます。問い合わせ内容を部署横断で集約し、定期的にFAQの見直しと更新を行う体制を構築しておくことで、住民の関心の変化に応じた継続的な改善が可能になります。
9-5. 次期JIS改正・規格動向への備え
JIS X 8341-3は今後改正が見込まれており、国際的なウェブアクセシビリティ規格との整合性を高める方向での見直しが議論されています。改正が行われた場合、適合レベルの判定基準や試験方法が変更される可能性があるため、総務省や関連団体が発信する最新動向を継続的に確認しておくことが望ましいです。リニューアル時にアクセシビリティに配慮したCMSとテンプレート構造を選んでおくことで、将来の規格改正に対応する際の改修範囲を小さく抑えやすくなります。
9-6. 他自治体との比較・ベンチマーク
自庁のホームページの改善状況を客観的に評価するためには、他の自治体の取り組みと比較する視点も有効です。人口規模や産業構造が近い自治体のホームページを参考に、メニュー構成やアクセシビリティへの対応状況、検索機能の使いやすさなどを比較することで、自庁の改善余地を具体的に把握できます。総務省が公表するJIS規格対応状況調査の結果など、公的機関が実施する調査データも、ベンチマークの材料として活用できます。
10. 自治体ホームページ特有の運用課題
自治体のホームページ運用には、民間企業のコーポレートサイトとは異なる特有の論点があります。リニューアルを検討する際は、こうした自治体固有の事情も合わせて整理しておく必要があります。
10-1. 複数サイトの一体的な運用
多くの自治体では、公式ホームページ本体に加えて、観光情報サイトや子育て支援サイト、移住・定住促進サイトなど、目的別に複数のサイトを別々のドメインやCMSで運用しているケースが見られます。サイトが増えるほど、デザインの一貫性やセキュリティ管理の手間が増し、どのサイトに何の情報があるのか住民にも伝わりにくくなります。リニューアルのタイミングで、本体サイトとの統合や、共通のヘッダー・フッターによる一体感の確保を検討することで、運用負荷と住民の利便性を同時に改善できる場合があります。
10-2. 選挙・議会情報など公平性が求められるコンテンツの扱い
選挙公報や議会の会議録、行政委員会の情報など、自治体ホームページには政治的公平性や正確性が特に強く求められるコンテンツが含まれます。これらのページはデザインの自由度よりも、情報の正確な伝達と更新の即時性が優先されるべき領域であり、リニューアル時にもレイアウトの変更が情報の伝わりやすさを損なわないよう、慎重な確認が必要です。更新を担当する部署が選挙管理委員会や議会事務局など独立性の高い組織である場合、CMSの権限設計においても、他部署とは異なる運用ルールを設定しておくことが望ましいです。
10-3. 広報媒体との連携と情報発信の一元化
自治体は広報誌・SNS・防災行政無線など、ホームページ以外にも多様な広報媒体を活用しています。リニューアルにあわせて、ホームページを情報発信の一次情報源として位置づけ、SNSや広報誌からはホームページの詳細ページへ誘導する運用フローを整理しておくことで、情報の重複作成や記載内容のばらつきを防ぐことができます。CMS側でSNS連携機能やRSS配信機能を備えておくと、複数媒体への展開作業を効率化しやすくなります。
10-4. 議会・監査対応における説明責任
自治体のホームページ関連事業は、議会での予算審議や監査の対象となることがあります。リニューアルにあたっては、なぜこの時期に実施するのか、想定される効果をどう測定するのかを、議会や住民に説明できる形で整理しておくことが求められます。アクセス状況やアクセシビリティ試験結果といった客観的な指標を継続的に記録しておくことで、事後の効果検証や次回の予算要求においても、説明責任を果たしやすくなります。
10-5. 庁内の合意形成とトップマネジメントの関与
ホームページのリニューアルは一担当部署だけで完結するものではなく、各部署のコンテンツ責任者や情報システム部門、財政部門など、多くの関係者の合意を要するプロジェクトです。首長や幹部職員がDXの方針として明確にコミットしている自治体ほど、部署横断的な調整がスムーズに進む傾向があります。プロジェクトの初期段階で、リニューアルの目的と期待する効果を幹部層に説明し、庁内のDX推進体制の中にホームページ刷新を明確に位置づけてもらうことが、その後の進行を円滑にする重要な布石になります。
11. まとめ
自治体DX・行政DXの流れの中でホームページに求められる役割は、単なる情報掲示板から、住民サービスへの入口を担うデジタル基盤へと変化しています。ガバメントクラウドが対象とする基幹業務システムの標準化とホームページの刷新は技術的には別の取り組みですが、住民目線のデジタルサービスを実現するという大きな目標は共通しています。
本記事で解説したポイントを整理すると、自治体DX推進計画における位置づけを庁内で説明できるようにすること、住民目線のUI設計とアクセシビリティ対応を初期段階から組み込むこと、セキュリティ要件と個人情報保護への配慮を仕様書に明記すること、公募型プロポーザルの特性を理解した発注プロセスを設計すること、そして公開後もPDCAサイクルで改善を続けることが、失敗しないリニューアルの土台となります。
ホームページのリニューアルは一度限りのプロジェクトではなく、数年単位で見直しを重ねていく自治体DXの一部として捉えることで、限られた予算と人員の中でも持続的な改善を続けやすくなります。
フォー・クオリアは、Webサイト制作実績案件数20,000件以上を持ち、商社・製造・不動産・金融・大学・サービス業界・官公庁まで幅広い業界のプロジェクトを担当してきました。Movable Type ProNet認定パートナーとして官公庁・自治体に適したCMS選定をご提案できるほか、Webアクセシビリティの診断・改善、サーバー移行・構築、SEO対策・アクセス解析まで、企画設計から運用までを一社で完結できる体制を整えています。
システム開発・アプリ開発事業も展開しているため、オンライン申請フォームの構築など機能要件にも柔軟に対応できる点が強みです。自治体ホームページのリニューアルでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。